2024年4月からバイオ製剤による治療を開始し、多くの患者様の治療にあたらせていただきまして、徐々に患者様からのフィードバックで当院のアトピー性皮膚炎治療がどんどんステップアップしてきました。
クリニックによる診察と、自宅での治療・セルフケアを両立させることで、これまで以上に快適な生活を送れるようになっています。
今回のブログは、2、3ヶ月に1回のクリニックの診察で、自宅での自己注射、外用治療、スキンケアにより、症状をコントロールできる、というお話です。
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バイオ製剤で治療の選択肢が広がる
これまで「なかなか良くならない」「ステロイドを使っても再発する」という悩みを抱える方が多かったアトピー性皮膚炎。
しかし近年、バイオ製剤(生物学的製剤)の登場によって状況は大きく変わりました。
バイオ製剤は、アトピーの炎症反応に関わる皮膚の免疫反応を、注射や内服薬を用いて体の中からピンポイントで抑えるお薬です。
そのため、従来の治療で改善が難しかった中等症〜重症の患者さんでも、かゆみや皮疹を大幅に減らし、快適な日常生活に近づけることができるようになってきました。
そして、かゆみや皮疹が改善することで、肌の奥から表皮への改善を経て、バリア機能が改善し、とびひやヘルペスウイルス感染症の併発や、紅皮症への進展を抑制できることに繋がっています。
「痒くても掻くのを我慢するしかない」と思っていた方にとって、やっと寄り添ってくれる治療の時代が来た、と言えます。
当院で扱っている製剤は、デュピクセント、ミチーガ、アドトラーザ、イブグリースの注射4剤となり、小さいお子さん(中学生以下)を除き、自己注射指導を行いますので、自宅での治療が可能です。
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安全な外用療法の確立
そして、皮疹に直接外用することで抗炎症効果を得られるステロイド外用薬は、「適切に使えば安全」という科学的根拠が整理され、必要なときにしっかり塗る「プロアクティブ療法」が確立してきています。
また、タクロリムス軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏、ブイタマークリームなど、非ステロイド外用薬の選択肢が増えてきたことで、症状の改善によってステロイド外用剤から切り替えたり、顔や首など皮膚の薄い部分への使用をすることで、外用薬のカスタマイズが可能になりました。
全身治療や外用治療の発展に伴い、従来は改善が難しかった中等症〜重症の患者さんでも、症状ゼロやそれに近い状態を目指せる時代になってきたと感じています。
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診療のゴールが変わる
以前「かゆみがあってもかかないように我慢、生活に支障が出なければよしとする」
現在「かゆみや皮疹のない、快適な生活、仕事や勉強に支障のない肌状態を目指す」
この患者さんのゴールのシフトにより、「夜眠れるようになった」「人前で肌を隠さなくてよくなった」といった声も増え、より社会生活を積極的に行えるようになった人が増えてきたことは、医療者として私たちも大変喜ばしいことです。
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治療と同じくらい大切な日常生活のスキンケア
ただし、バイオ製剤を使えばそれで終わり、というわけではありません。
アトピー性皮膚炎の根本には「皮膚バリア機能の弱さ」があるため、季節の変わり目や、環境汚染物質や花粉、自分のかく汗、寝不足、ストレスなどにより、かぶれたり、痒みを感じやすくなったりします。
その予防としてお勧めしているのが、症状がない時にも保湿や低刺激性のケア製品(特にシャンプーや洗浄剤)を選んで使用することです。
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スキンケアがサポートできること
当院でおすすめしているスキンケア製品は、アトピー肌の方にもやさしく使える製品です。
・高保湿:乾燥で弱った肌をうるおいで満たす
・低刺激性:敏感な肌でも毎日安心
・バリア機能サポート:肌を外部刺激から守る
バイオ製剤などで炎症をコントロールしながら、外用剤が必要なくなったらスキンケアで肌を守ることで、症状の再燃を最低限に抑えることが目標です。
治療とスキンケアの二本柱で安定した肌状態を長く維持することで、肌状態によるストレスを低減することが、現実的な意味での“寛解”かと思います。
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最後に
バイオ製剤に興味がある方、注射は嫌だけど薬以外のスキンケアに興味がある方など、いろんな心配やご希望にお応えするために、当院にはいろんな選択肢の用意があります。
どうぞお気軽に診察にてご相談くださいませ。